今回は、ミクロ経済学からの出題です。5問あります。
〔No.1〕ある企業の短期総費用曲線が次のように与えられている。
ただし,X1は変曲点,X2はSMC=SACに対応する生産量である。
次の記述のうち正しいものはどれか。
1 この短期総費用曲線から固定費用分を差し引くと長期総費用曲線が導出できる。
2 X1から短期限界費用曲線は逓増するが,これは収穫逓減の法則がはたらくためである。
3 X2は操業停止点である。
4 X2を上回る生産量に対応する短期限界費用曲線が短期供給曲線である。
5 X1が損益分岐点である。
(平成2年国家II種)
1.長期費用曲線は短期費用曲線の包絡線であり、固定費用分をひいたものではない。
2.X1は変曲点であり、ここを境として費用は逓増する。これは収穫逓減が働くためである。
3.X2はSMC=SACに対応する生産量であるから損益分岐点となる。
4.短期供給曲線となるのは、操業停止点より右上の限界費用曲線上である。
5.X1は操業停止点である。
で示されるものとする。この企業の損益分岐点に対応する生産量はいくらか。
1 2
2 3
3 4
4 5
5 6
損益分岐点では、MC=ACである。
2
MC=3X −4X+5…(1)
2
AC=X −2X+5+8/X…(2)
2
(1)、(2)より、2X −2X−8/X=0
3 2
2X −2X −8=0
2
2(X−2)(X +X+2)=0
X=2
〔No.3〕図は,ある製品を生産する企業の限界費用曲線(MC),平均可変費用曲線(AVC)および平均総費用曲線(ATC)を示したものである。この企業の生産に関する次の記述のうち,妥当なものはどれか。ただし,総費用=可変費用十固定費用で,この企業は固定費用(一定額)をすでに負担しているものとする。
1 生産する製品の市場価格がP1のとき,この企業が利潤を最大化すると,その生産量はX4になる。
2 生産する製品の市場価格がP1のとき,この企業が生産量はX3で生産すると,この企業は赤字になる。
3 生産する製品の市場価格がP2のとき,この企業が利潤を最大化すると,赤字にもかかわらずこの企業は生産を行なう。
4 生産する製品の市場価格がP2のとき,この企業が利潤を最大化すると,その生産量はX2となり,この企業は黒字になる。
5 生産する製品の市場価格がP2のとき,この企業が利潤を最大化すると,その生産量はX1になる。
(平成4年国家II種)
完全競争市場において,財Xに個別消費税(従量税とする)を課した場合,図のように供給曲線はS1からS2へシフトし,均衡点はE1からE2へ移るので,単位当たりの売り手の負担はHG,単位当たりの買い手の負担はE2Hとなる。このとき,需要の価格弾力性がより大きくなると単位当たりの売り手の負担は(ア),供給の価格弾力性がより大きくなると単位当たりの買い手の負担は(イ)。
(ア) (イ)
1 増加し 増加する
2 増加し 減少する
3 減少し 増加する
4 減少し 変わらない
5 減少し 減少する
(平成4年国家II種)
〔No.4〕正答 1
税金の負担については需要の価格弾力性と供給の価格弾力性の大きさで売り手、買い手の負担割合が変わってくる。一般に弾力性が大きいと曲線自体の傾きは緩やかになる。したがって、弾力性の値が大きい方が負担割合は小さくてすむことになる。覚え方としては「寝ている方が得をする」と覚えておくとよい。
〔No.5〕ある独占企業で生産される財の需要曲線および総費用曲線がそれぞれ,
需要曲線:X=3一1
総費用曲線:TC=X+1
(X:需要量・生産量,P:価格,TC:総費用)
で示されるとする。この企業が利潤を最大化するように行動したとき,その利潤はいくらになるか。
1 0
2 1
3 2
4 3
5 4
〔No.5〕正答 1
利潤(π)=価格(P)・生産量(X)−費用(TC)で求められる。
利潤極大の生産量は、限界費用(MC)=限界収入(MR)で求められる。
限界費用はTCをXについて微分すればよいから、
ΔTC
───=1 …(1)
ΔX
限界収入は、収入(P・X)Xについて微分すればよいから、
ΔP・X Δ{(3−X)X}
────=─────────=3−2X …(2)
ΔX ΔX
(1)、(2)より、X=1、P=2
生産量1のとき、利潤は、
2×1−(1+1)=0 となる。