頻出問題解法セミナー:経済学(2)


 今回は、マクロ経済学からの出題です。5問あります。



〔No.1〕家計部門,企業部門,政府部門,海外部門で構成されている経済において,
      国民純生産(NNP) 280
      民間消費支出     150
      政府消費支出      50
      輸出          40
      輸入          30
      資本減耗分       20
      間接税         20
      補助金         10
であることがわかっているとき,次の記述のうち妥当なものはどれか。
1 国民総生産(GNP)は310である。
2 粗投資は90である。
3 要素費用価格の国民所得(NI)は290である。
4 純投資は60である。
5 GNPに占める貿易黒字の割合は約6%である。
(平成3年国家II種)


〔NO.1〕正答 2

1.国民総生産(GNP)=国民純生産(NNP)+資本減耗分 より、

280+20=300となる。

2.国民総生産(GNP)=民間最終消費支出+政府消費支出+粗投資+輸出−輸入 より、

  300=150+50+粗投資+40-30  粗投資=90

3.要素費用価格の国民所得(NI)=国民純生産(NNP)−(間接税−補助金) より、

  280-(20-10)=270

4.純投資=粗投資−資本減耗分 より、90-20=70

5.貿易黒字=輸出−輸入 (この値がプラスのとき黒字) より、40-30=10

  10/300=0.033 約3.3%となる。



〔No.2〕マクロ経済モデルが,
     Y=C+I+G
     C=1+0.8(Y−T)
     T=0.25Y−a
{Y:国民所得,C=消費,I:投資(一定),G=政府支出(一定),T:税収,
a:税額控除(a>0)}
で示されるとき,税額控除を1だけ増加させることにより減税を行なうと,国民所得は
いくら増加するか。
  1
1 ─
  2
2 1
3 2
4 3
5 4
(平成4年国家II種)


〔NO.2〕正答 3

 均衡国民所得を求めるには、Y=C+I+Gの需給均衡式に与えられた式を代入すればよい。

  Y=1+0.8(Y−0.25Y+a)+I+G

  (1−0.8+0.2)Y=0.8a+I+G+1

       1

  Y=────────(0.8a+I+G+1)     

    (1−0.8+0.2)

  Y=2.5(0.8a+I+G+1)

 税額控除のみ1だけ増加させた場合の国民所得の変化は、

  ΔY=2.5(0.8×Δa) より、ΔY=2 国民所得は2増加する。


〔No.3〕ある閉鎖された国のマクロ経済が,
      Y=C+I+G
      C=0.8(Y−T)           
〔Y:国民所得,C:消費,I:投資(一定),G:政府支出,T:徴収された租税〕
で示されるとする。この国の政府は10の政府支出拡大を行なう一方で,均衡財政を維
持するため同時に10の増税を行なうことを決定した。この政策の国民所得に与える効
果として妥当なものは次のうちどれか。
1 国民所得は40減少する。
2 国民所得は変わらない。
3 国民所得は10増加する。
4 国民所得は40増加する。
5 国民所得は50増加する。
(平成6年国家II種)



〔NO.3〕正答 3

 政府支出による国民所得の増加と増税による国民所得の減少を比較すればよい。

結論からいうと、増税と政府支出が同額の場合(均衡予算の場合)は乗数は1となり、政府支出を行った分だけ国民所得は増加することになる。

(政府支出による乗数効果)

 Y=0.8(Y−T)+I+G

 Y=−4T+5(I+G)

 ΔY=5ΔG=5×10=50  政府支出10により、国民所得は50増加する。

(増税による乗数効果)

 Y=−4T+5(I+G)

 ΔY=−4ΔT=−4×10=−40  増税により、国民所得は40減少する。

 したがって、全体では国民所得は10増加する。




〔No.4〕ある国のマクロ経済が,
     Yt=Ct+It+Gt
     Ct=0.8Yt+40
 (Yt:t期の国民所得,Ct:t期の消費,It:t期の投資,Gt:t期の政府支出)
で示され,今期においては投資が90,政府支出が70であったが,来期においては投
資が10増加して100になると予測されている。このとき,来期の国民所得を今期と
比べて10%増加させるため,政府が来期において増加させる政府支出はいくらか。
1 10
2 20
3 30
4 40
5 50
(平成5年国家II種)


〔NO.4〕正答 1

まず、今期(t期とする)の国民所得を求める。

 Yt=0.8Yt+40+It+Gt

 Yt=200+5(It+Gt)=200+5(90+70)=1000

次に、来期(t+1期)は国民所得は今期と比べて10%増加させるので、100の増加となる。

 ΔY=5(ΔIt+ΔGt)

 ΔIt=10なので、

 100=5(Δ10+ΔGt)

政府支出の増加分ΔGtは、

 ΔGt=10  となる。



〔No.5〕マクロ経済が,
 Y=C+I+G+X−M,C=0.8Y+20,M=0.2Y+10
〔Y:国民所得,C:消費,I:投資,G:政府支出,X:輸出,M:輸入〕
で示され,当初,投資が100,政府支出が50,輸出が80であった。政府支出を
20増加させた場合,貿易収支(=X一M)はどのように変化するか。ただし,当初の
投資および輸出は変化しないものとする。
1 当初貿易収支は赤字であり,その赤字がさらに10増える。
2 当初貿易収支は赤字であり,その赤字が10減る。
3 当初貿易収支は黒字であり,その黒字がさらに10増える。
4 当初貿易収支は黒字であり,その黒字が10減る。
5 貿易収支は変化しない。
(平成6年国家II種)

〔NO.5〕正答 1

 当初の貿易収支を求める。

 Y=C+I+G+X−M の需給均衡式に与えられた資料を代入する。

 Y=0.8Y+20+100+50+80−(0.2Y+10)

 Y=600

このときの輸入は、 0.2×600+10=130 である。

したがって、貿易収支は、 80-130=−50(50の赤字)となっている。

次に、政府支出を20増加させた場合の国民所得の増加は、

 ΔY=2.5(ΔI)   

   =2.5×20

   =50

このときの輸入の増加分は、

 ΔM=ΔY×0.2

   =50×0.2

   =10

輸出は不変なので、貿易収支は、

 80-(130+10)=−60(60の赤字)となり、赤字が10増えていることになる。



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